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感染症拡大の防止策の一つとして換気の重要性がかつてないほど注目されています。
家の空気は人が生活するとホコリやチリ、有害物質などで溢れ換気しないとその空気を吸って生活することになります。
飲み水には気をつけても室内の空気質を気にする人は少ないのではないでしょうか。
今回厚生労働省が示した換気に関する指針は主に人が集まる商業施設などを対象とした内容ですが、1日の中で最も長い時間過ごす「住宅における換気」について解説します。
H2003年に換気設備設置の義務化がスタート
住宅の高気密・高断熱化と室内内装材から発生する揮発性の化学物質に反応した人が頭痛やめまい、吐き気など健康被害が相次ぎ住宅の換気設備の義務化がされました。
これは「シックハウス対策」としての換気設置の義務化です。
現在新築住宅や既存住宅に増築する場合は換気計画書と、その換気システムが確保できる換気能力の根拠を示し確認申請時に提出することが義務づけされています。
シックハウス対策の換気量は一時間に住宅全体の空気を半分入れ替えることと決められました。
シックハウス対策での換気量は0.5回/時換気と言われ
一時間に住宅全体の体積m3(立方メートル)を何回入れ替えるかということです。
1回/時は一時間に住宅全体の体積を1回入れ替えることになりますので0.5回/時は半分入れ替えることになります。
しかしこの0.5回/時換気の問題は、住宅の大きさやそこに住む人の人数に関係なく換気するというものなのです。
厚生労働省が推奨する一人30m3の換気量とは
30m3 は8畳の部屋の体積くらい
根拠はこちら
ビル管理法の基準
(1) 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビ ル管理法)では換気回数ではなく、室内の一酸化炭素濃 度(10ppm)や、二酸化炭素濃度(1000ppm)の基準を 設定することで、居室の適切な換気量を確保すること を求めている。
(2) この基準を実現するため、空気調和・衛生工学規格で は、人体から発生する二酸化炭素に基づき、1人あたり の必要換気量を約 30m3 毎時とし、居室の在室密度に応 じ、必要換気量を示している(表1)(空気調和・衛生 工学会(1972))。
(3) ビル管理法では、相対湿度についても基準(40%~ 70%)がある。冬季の低湿度状態は、気道粘膜を乾燥さ せ気道の細菌感染予防作用を弱めるとともに、インフ ルエンザウイルスの生存時間が延長し、インフルエン ザに罹患しやすい状況になることから、湿度下限値を 40%としたものである(厚生労働省(2001))。
(4) 換気量は外気導入用のファンの能力に依存する。外 気導入用のファンの能力に余裕があれば、外気導入量 をある程度増加できる可能性がある。しかし、大幅に増 加させるためには、設備の改修が必要となるため、短期 間で実施することは困難である。
国が示す換気の考え方は2つある
ここまで解説した換気に関する義務化や指針はどちらがいいとかということではなく、どちらも根拠をもとに作られた考えです。
住宅における換気回数の基準はあくまで「シックハウスを防ぐため」の換気であり省エネルギー性や住宅大きさや家族数は考慮されていません。
一方のビル管理法の基準は公共の場で多数の人が集まる会議室や商業施設を対象とした基準です。
大事なのは目に見えない空気をどうコントロールして確実に換気するかということになります。
換気量を測定し1000ppmをクリアする方法
計画計量換気法式
ジョイ・コスの換気システムは一人に必要な換気量から家族数、住宅の大きさなどから必要な換気量を計画し住宅全体で1000ppmをクリアする24時間換気システムでビル管理法に近い考えから作られています。
下図は 強制排気 自然給気で室内を微小な負圧状態とし室内に空気の流れを作ります
壁に取り付けた給気口から入ってきた新鮮空気は各部屋の排気レジスタへ向かって流れていきます
この時空気の流れるスピードは0.15m/秒以下とし気流を感じさせない流れです。
排気レジスタは各部屋ごとに排気量を可変させることができ、設定により寝室の空気をローカや他の居室に
漏らすことを防ぐこともできます。
この方法は感染症の病室(陰圧室)と同じ考えです。
ジョイ・コス24時間換気の空気の流れをイメージ。室内に浮遊するホコリやチリ、有害物質などはトイレやクローゼットに取り付けた排気レジスタに流れ換気本体に集まり外部に捨てられる。
ジョイ・コスの換気量の根拠は二酸化炭素の発生量と室内の二酸化炭素濃度の基準値1000ppmから設定していて一人に必要な換気量の根拠となるものです。
人が吐き出す二酸化炭素量を18リットル(0.018m3/人・時)とした場合、外から持ち込まれる二酸化炭素量は約350ppm
室内の二酸化炭素量の上限を1000ppmとすると
一人に必要な換気量は27.7m3/時となり 4人家族なら 110.8m3/時が最低必要な換気量となります。
この考えから住宅の大きさ、間取りなどを考慮して換気量を決定していきますので総換気量はこれより多くなっていきます。

各部屋の換気量の測定は完成時に行うが家族数の増減や生活スタイルの変化に応じて変更もできる。

換気のコントロールスイッチ。多人数が集まったり匂いが気になる時など換気量を一時的に上げることができる。

簡易的に二酸化炭素濃度を測定し換気量が適正である事を知ることができる。
高気密・高断熱・24時間換気は住宅の基本ベース
換気を計画通り動かすには何より高気密・高断熱であることが前提
となります。
特に気密は24時間換気システムを図面通りの空気の流れ経路として作るには必須であり
ジョイ・コス住宅システムではその基準値を0.5cm2/m2以下としています。

換気を計画的に動かすためにも気密は重要、気密測定は住宅づくりの総仕上げのテストとも言える。
今回厚生労働省が推奨する「ビル管理法の基準」を満たしていれば「一人30m3」の換気量は満たしている
との見解を示していますが、これで感染症を防げるわけではありませんが少くなとも「換気の悪い密閉空間」には当たらないとしています。
まとめ
換気に関しては設置の義務化はあるものの、実証検証までを義務化しているわけではありません
本当に換気として機能しているかは作り手の工務店が責任を持って確認する方法を確立することが必要です。
ジョイ・コス住宅システムは24時間換気システムを標準採用しています。
高気密・高断熱住宅にとって換気は人間ならば肺と同じで、生活する上でとても重要な部分としてシステムに加えております。
最後にナイチンゲールの言葉
換気に関してナイチンゲールは著書「看護の覚え」の中で換気の重要性について書いています。
・病人は体内の回復過程を進めるために、健康な人よりもはるかに新鮮な空気を必要としている。
・室内の汚れた空気を清浄にしない限り室内に発生する汚れた空気を際限なく吸収することになりかねない。
・また「空気は常に屋外から、しかも最も新鮮な空気の入る窓を通して取り入れる」
空調設備の整った現代においても、この原則は変わらないとしています。

金井一薫 編著 西東社
換気は一定の換気量を24時間連続して行うことで常に室内を清浄な状態を保ち、人の健康はもとより家そのものを結露やカビの発生から守り大切な家族と家を守ってくれます。
参考文書 新型コロナウイルス感染症性制御における「換気」に関して
参考文書 商業施設における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について