2021年4月から住宅の新築等の際に設計者(建築士)から建築主へ省エネ性能に関して説明することが義務付けされるのをご存知でしょうか。
自動車であればリッター〇〇キロ、家電であれば消費電力量が〇〇キロワット等、何となく理解できると思いますが、建物の省エネ性といわれても正直ピンときませんよね。
そこで今回は、建物(戸建住宅)の省エネ性がいったい何で判断されているのかというテーマで書いていきたいと思います。
住宅の省エネ性は何で判断される?
日本における住宅の省エネ基準は2度にわたるオイルショックを契機として昭和55年に初めて制定されました。元来、断熱や気密の概念すらなかった日本の住宅において、最低限これくらいは断熱してくださいね、くらいの内容で当然法的拘束力も何もない単なる指針としてスタートしました。
その後、平成4年、11年に基準強化等の改正がありましたが、平成25年の改正まで、住宅の省エネ性は建物の断熱性と気密性、夏期における日射遮蔽性だけで判断されていました。つまり、暖房や冷房にかかるエネルギーが多いか少ないかで住宅の省エネ性が判断されていたということです。
図1は日本の住宅における用途別エネルギー消費量の内訳を示しています。ご覧の通り、暖房・冷房が占める割合は全体の1/4程度であり、中途半端な断熱性の向上だけでは大きな省エネ効果が期待できないのがわかります。
図1 世帯当たりの用途別エネルギー消費の内訳
(資源エネルギー庁 エネルギー白書2019より)
そこで、平成25年の省エネ基準の改正により、断熱や夏期の日射遮蔽性に加え、暖冷房以外のエネルギー消費量も評価対象とした一次エネルギー消費量の基準というものが設定されました。今現在の建築物省エネ法で評価の対象となっているのは暖房、冷房、換気、給湯、照明の5つの用途で、それぞれの用途にどういった設備を使うかによって消費されるエネルギー量が算定される仕組みになっています。
説明義務とは何を説明する!?
2021年4月から始まる説明義務に関しては、上記の断熱性・日射遮蔽性、一次エネルギー消費量が、基準に適合しているかどうかを建築主に対して行うというものです。
仮に基準に適合していない場合は、どうすれば適合するか、それにはどれくらいコストがかかるかなども説明する必要があります。ただし、建築主側から説明を希望しない旨の意思が書面で示された場合は、説明しなくてもよいという内容にもなっております。
あくまで説明義務であって適合義務ではないのが残念ですが、これを機に設計者側も建築主側も断熱や気密に対する意識付けがされ、より人と地球に優しい住宅が普及していくことを願うばかりです。
今回はここまで。基準の内容に関しては、後日改めて書きたいと思います。