こどもみらい住宅支援事業とZEH

今年度の住宅取得支援策の目玉の一つである「こどもみらい住宅支援事業」が本格的に動き出しました。

これまで住宅版エコポイントなど「〇〇ポイント制度」として数種の支援事業が実施されてきましたが、現金による支援策は初めてで、さらに新築では最大100万円というかなり高額な補助制度となっています。

新築の場合、施主の属性条件の他に建物の省エネ性能に応じて60万円・80万円・100万円の3段階の補助額が設定され、概要は下表の通りです。

住宅の性能 補助額
ZEH住宅 強化外皮基準に適合し、再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量が削減される性能を有する住宅 100万円
高い省エネ性能等を有する住宅 次のいずれか
・認定長期優良住宅
・認定低酸素住宅
・性能向上計画認定住宅
80万円
一定の省エネ性能を有する住宅 断熱等性能等級4かつ一次エネ消費量等級4を有する住宅 60万円

これまで長期優良住宅に対する優遇が一番手厚かった印象ですが、本制度ではZEH住宅が最上位に設定されています。ここで、ZEH住宅とはそもそも何なのか、簡単にまとめてみます。

ZEH住宅とは

まずZEHは「ゼッチ」と読みます。簡単に言えばゼロエネ住宅なのですが、下記のような明確な定義があります。(経産省資料より)

1.ZEHの定性的な定義(戸建住宅の場合)

ZEHとは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」

そして、再生可能エネルギーの導入量などに応じて戸建住宅ではさらに以下の3つに分類されています。
『ZEH』(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギー等により年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの住宅
Nearly ZEH(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
『ZEH』を見据えた先進住宅として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギー等により年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた住宅
ZEH Oriented(ゼロ・エネルギー・ハウス指向型住宅)
『ZEH』を指向した先進的な住宅として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた住宅

2.ZEHの定量的な定義(判断基準)

『ZEH』 以下の①~④のすべてに適合した住宅
ZEH強化外皮基準に適合
②再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減
③再生可能エネルギーを導入(容量不問)
④再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減
Nearly ZEH 以下の①~④のすべてに適合した住宅
ZEH強化外皮基準に適合
②再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減
③再生可能エネルギーを導入(容量不問)
④再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の一次エネルギー消費量削減
ZEH Oriented 以下の①及び②のいずれにも適合した住宅
ZEH強化外皮基準に適合
②再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減

経産省資料より書き出すと概ね上記の通りですが、簡単に書くと、断熱等性能等級5かつ一次エネ消費量等級6を満足した上で、太陽光発電設備等を導入することで
基準一次エネルギー消費量から100%以上一次エネ消費量を削減 → 『ZEH』
基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の一次エネ消費量削減 → Nearly ZEH
基準一次エネルギー消費量から75%未満または太陽光発電設備等未導入 → ZEH Oriented
となります。ただし、ZEH Orientedは北側斜線制限の対象となる用途地域で敷地面積が85㎡未満である土地に建つ平屋以外の住宅または多雪区域に建つ住宅に限られます。

ZEHの定義は以上の通りで、これらに合致していればZEH住宅ということになります。
よく工務店さんからZEHをやってみたいけどZEHビルダーに登録しないとダメなの?という問合せを頂くことがあるのですが、ZEHは上記の基準を満足した建物のことであり、ZEHビルダーは条件ではありません。ただし、環境省や経産省が実施しているZEH関連の補助事業を活用する場合はZEHビルダーの登録が要件になっています。また、ZEH関連の補助事業を活用する場合、第三者による評価書が必要になり、今現在ですとBELS(ベルス)評価がそれに該当します。

話は戻りますが、こどもみらい住宅支援事業において100万円の補助金をもらうためにはZEH住宅であることが要件になっております。申請をする際にはZEH住宅であることを証明するためにBELS評価を受け、上記3つのZEHのいずれかに該当する必要があります。

また、本年4月より品確法の住宅性能表示制度が一部見直され、断熱等性能等級に最高等級として等級5、一次エネルギー消費量等級に等級6が新設されました。断熱等性能等級5はZEHの定量的定義にある「ZEH強化外皮基準」とイコールで、一次エネルギー消費量等級6は「再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減」とイコールであり、この2つをともに満足する住宅のことを最近の国策ではZEH水準とかZEHレベルの住宅という風に呼んでいます。

まとめると、こどもみらい住宅支援事業においてZEH住宅とは『ZEH』、Nearly ZEH、ZEH OrientedとZEH水準の住宅を指し、ZEH OrientedとZEH水準の住宅に関しては太陽光発電等は不要なので、100万円の難易度がぐっと下がります。BELS評価でZEHとするか設計住宅性能評価で断熱等性能等級5かつ一次エネ消費量等級6を受ければよいわけで、評価申請の手間は多少かかりますが要求されるレベルはそこまで高くないので新築住宅ならZEH住宅が絶対オススメです。

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