気密の考え

気密

気密のともなわない高断熱化は意味がない!?

高気密住宅といえば、大半の人は隙間(すきま)のほとんどない息苦しい住宅をイメージするのではないでしょうか。

住宅の断熱化とともに普及した気密住宅ですが

住宅の隙間を減らす

隙間風が減る

暖気が逃げない

省エネ

といったような感覚から、隙間風による熱ロスを抑えるためだけが気密化の目的と認識され、結果、密閉された息苦しい住宅のイメージが植え付けられたのでしょう。

しかし、住宅の気密化の目的はそれだけではなく、次に示すように大きく4つの目的があります。

気密化の目的① 隙間風によるエネルギーロスの低減

建物に隙間がたくさんあると、当然のことながらその隙間を通って空気が出入りします。
特に冬場、暖房でどんなに室内を暖めてもその暖められた空気が隙間から逃げ冷たい外気が隙間から入ってくれば当然寒さを感じますし、暖房エネルギーを無駄に捨てていることになります。
暖かい空気は軽いので、主に天井などの隙間から逃げ、その代わりに床廻りの隙間から冷たい外気が入ってきます。
どんなに暖房を強く運転しても足元が寒い家、そんな家は断熱もそうですが気密がともなっていないのが原因です。
ですから、隙間をできるだけ少なくすることで暖房の効率を上げ、同時に暖房にかかるエネルギーを抑えるというのが一つ目の目的となります。

気密の目的1

気密化の目的② 断熱材の断熱効果を最大限に発揮させる

断熱材はその中にある空気をできるだけ静止させることによって、その断熱性を生み出しています。
つまり、どんなに優れた断熱材をどんなに厚く使ったとしても断熱材の周辺で空気が移動してしまえばその断熱効果は発揮されないことになります。
断熱材に入り込む空気をシャットアウトして断熱材の断熱効果を高める、これが気密化の二つ目の目的となります。

気密の目的2

気密化の目的③ 内部結露の防止

プラスチック系の断熱材とは違い、グラスウールなどの繊維系の断熱材は通気性があり、空気とともに水蒸気も通します。
冬期、暖房により暖まった室内の空気は、水蒸気もたくさん含んでいますから通気性のある繊維系断熱材を通ると外気側で冷たくなり、壁の中で結露してしまいます。
この現象を内部結露といい、直接目に見えない部分での結露ですので、気づいた時には壁の中がカビだらけだったり、木材が腐っていたりと建物に深刻なダメージを与える現象です。

これを防ぐために断熱材より室内側に防湿シート等を張ることで、室内の水蒸気が壁の中に入らないようにします。これが気密化の三つ目の目的です。空気に対する気密ではなく、水蒸気に対する気密という考え方です。
また、プラスチック系の断熱材であっても吹付硬質ウレタンA種3に属する高発泡系のウレタン断熱材は、繊維系断熱材と同様に水蒸気を通しますので防湿シート等の対策が必要となります。

気密の目的3

気密化の目的④ 換気効率の向上

どんなに高価で性能の良い換気設備を導入しても、隙間だらけの住宅では、空気が好き勝手に出入りします。
つまり、換気経路における不安定な漏気や気流のショートサーキットを防ぎ、安定した換気を実現させることが気密化の四つ目の目的となります。

熱交換効率90%超の熱交換型換気設備を採用しても、熱交換の対象とならない漏気や隙間風があれば決して省エネとは呼べませんよね。

気密の目的4

住宅の省エネ基準における気密性能

住宅の省エネ基準は、過去に何度も改正を繰り返していますが、気密性の定量的な基準が登場したのは1992年(平成4年)の改正で、北海道や北東北といった寒冷地における気密性能を相当隙間面積C値で5.0c㎡/㎡以下というものでした。

※相当隙間面積C値:建物の気密性を表す指標で単位床面積当たりの隙間の大きさを表したもの。単位はcm²/m²。

一般的には1.0cm²/m²以下なら良しとされて
いますが、ジョイ・コスは0.5cm²/m²以下という独自の基準を設けており、実態としては平均0.2cm²/m²程度と超高気密。

その後、1999年(平成11年)に大幅な改正があり基準が強化されましたが、今現在は定量的な基準自体はなくなっています。

上述の通り住宅の気密化には省エネ性や室内空気質に関わる重要な目的があるにも関わらず、定量的な基準が廃止された背景には、相当隙間面積C値が小さいだけでは気密化の4つの目的すべてを達成することができないからといわれています。

①と④の目的に関しては、隙間が小さければその目的は達成されますが、②と③に関しては、気密層がしっかりしていてもその外側が隙間だらけだったり、あるいは空気に対する気密は確保されていても防湿対策(水蒸気に対する気密)がなされていなければ内部結露は生じてしまいます。

つまり、単に相当隙間面積C値を小さくすることが住宅の気密化ではなく、断熱材を隙間なく施工し、防湿対策もした結果C値も小さくなり、住宅の気密化がなされたということになります。
結果として、断熱材の断熱保温効果をフルに活かすことができ、換気効率の向上により、室内が常に清浄に保たれた健康で快適な住空間が実現されるのです。

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